コロナでリモート会議が増え、これまでのように会議室に集まって白板に書き出したりできない分、議論が発散して「グダグダで結論が出ない会議」になったという声を社内でもよく聞きます。
この記事では経営幹部が集まる経営会議を長年運営してきた筆者の経験から、効率的な会議運営を進行するための事前準備から当日までの流れとコツを解説します。
リアル会議・リモート会議どちらでも通用する内容ですので、是非最後までお読みください。
会議の良し悪しは事前準備で8割決まる
効率的な会議ができるかどうかは事前準備が8割、当日の進め方が2割を決めます。事前準備が甘いと会議はなるべくしてグダグダになってしまいます。
それではどのような事前準備が必要なのでしょうか。効率的な会議にするための事前準備のポイント5点を解説します。
- アジェンダごとに「位置づけ」と「ゴール」を明確にする(最重要)
- 意思決定・議論アジェンダでは「論点」を明確にする
- 出席者は過不足なく招集する
- 事前にアジェンダと資料を共有する
- ロジの事前準備
事前準備のポイント① アジェンダごとに「位置づけ」と「ゴール」を明確にする(最重要)
最も大事なポイントは、会議のアジェンダ(議題)ごとに「位置づけ」と「ゴール」を事前にハッキリさせて出席者へ共有しておくことです。
何かを意思決定しないといけないのか、議論して意見を引き出すだけでいいのか、単に情報共有なのか、位置づけをハッキリさせて事前に共有されていると、出席者は自然とゴールに向かって議論を進めることができます。
ゴールが明確になっていない場合でも、少なくともアジェンダの「位置づけ」は出席者にわかるように、事前に見える化して共有しておきましょう。
筆者はアジェンダの位置づけを「意思決定」「情報共有」「議論(ブレスト)」の3つに区分し、会議の出席者に事前連絡しています。
意思決定アジェンダ
当日の議論を通じて方向性を決めるための議題。会議の中で参加者が結論を出すことがゴールです。
その際に「何をどこまで意思決定する必要があるのか?(=論点)」を議題の報告者と確認して明確にしておきましょう。
情報共有アジェンダ
出席者間でコミュニケーションをとるための議題。
すでに終わったことの報告、これから起こることへの事前共有など、特に議論の余地がないものはこの区分にします。
議論(ブレスト)アジェンダ
出席者で議論をして意見を引き出すための議題。
ブレストは最もグダグダになりやすいアジェンダですが、工夫次第で効率的にメンバーの意見を引き出すことができます。
少人数かつ時間を区切ってやること、何について議論するのか明確にしておくこと、会議までにメンバーに意見を考えてきてもらうことがポイントです。
事前準備のポイント② 意思決定・議論アジェンダでは「論点」を明確にする
何を議論して何を決めるのか?論点はできるだけ具体的かつ明確にしておきます。
アジェンダが「XXシステム構築の承認」であれば、「XXシステムの構築にあたり、A社、B社への発注を比較し価格・納期面からA社採用することの可否について」と言った具合に具体的に結論が出せるように準備しましょう。
事前準備のポイント③ 出席者は過不足なく招集する
アジェンダ毎にふさわしいメンバーのみを漏れなく招集します。
「意思決定」の議題であれば、決定権のある責任者はもちろん、決定事項を遂行する責任者もなるべく出席するように調整しましょう。決定事項の伝達だけだと、遂行者に細部の意図が伝わらなかったり、自分のいない場で物事が決まることでモチベーションダウンにつながります。
一方で、意思決定に影響ないメンバーの出席は控えてもらうようにします。
会議に出てもらう時間がもったいないですし、会議人数が多いと出席者も積極的に意見を言いにくい雰囲気になります。
事前準備のポイント④ 事前にアジェンダと資料を共有する
会議当日までにしっかりと意見を考えてきてもらうためにもアジェンダと資料は事前に共有しておきましょう。
会議の位置づけにもよりますが、経営会議などの場合は主要なアジェンダは1週間前、資料を2日前には共有するようにしています。もちろん緊急対応の場合は臨時でアジェンダの追加・変更するなど柔軟に対応します。
特に意思決定、議論(ブレスト)のアジェンダでは出席者の事前準備がものを言うため、主催者がしっかりと事前共有することが大切です。
事前準備のポイント⑤ ロジの事前準備
ロジ=ロジスティクスの略で、会議室の予約、出席者調整、ビデオ会議の準備など、会議をするための諸々の業務のことを指します。
地味な仕事ですがロジの事前準備はとても大切です。特に最近はリモートワークでのビデオ会議も増えているので、当日になって思わぬ通信トラブルがあると会議自体が成立しなくなります。
商談や経営会議など重要な会議の場合には、事前に通信テストをして当日のトラブルリスクを減らし、万一トラブルがあっても電話やLINEなどで会議参加できるようにバックアップを準備しておきましょう。
効率的な会議の進め方(当日)
会議当日のキーパーソンは司会(ファシリテーター)
会議の事前準備がしっかりできている場合、当日の会議の成否は司会(ファシリテーター)の腕にかかっていると言っても過言ではありません。
司会は事前に各アジェンダの位置づけ・論点をしっかりと理解し、会議を成功に導く(=時間内に結論を出す)ことがミッションです。
会議の進行に合わせた、司会の役割を3つあげます。
- 冒頭:位置づけと論点をリマインドする
- 中盤:論点に対し参加者の意見を引き出す
- 終盤:会議の結論を出す(ラップアップ)
① 冒頭:位置づけと論点をリマインドする
会議の冒頭に、本日のアジェンダの位置づけは何か、何を意思決定・議論しなくてはいけないかを出席者全員へリマインドします。
② 中盤:論点に対し参加者の意見を引き出す
意思決定のアジェンダでは、決定権のある責任者全員のYes/Noを確認しましょう。
アジェンダのキーマンが発言できていない場合は、「○○という意見もありますが、△△さんはいかがでしょうか」のように、議論を促します。
また会議中、議論が関係ない話題に飛び火した場合は、「ご意見ありとうございます。この件は別の機会で検討させていただきます」と断りを入れて、本来検討すべきことに議論を呼び戻しましょう。
③ 終盤:会議の結論を出す(ラップアップ)
充分に論点への議論が出れば、結論として決定事項と宿題事項をラップアップします。これを司会がしないと、出席者が自分に都合の良い解釈をして帰ることがあります。
「本日の結論として、決定事項は○○、宿題事項は△△、××…でよろしいでしょうか」と出席者全員の前で確認をしましょう。
また意見が割れたり、情報不足で結論が出ない場合は「保留にする」「条件付きで決定する」といった結論もアリです。
大事なことは会議の場で何が決まり、何が決まっていないのかを出席者全員で明確にして終わらせることです。
司会は空気を読まなくていい
司会は会議を成功に導く(=時間内に結論を出す)ことがミッションです。
そのため、もし関係ない話題で議論が逸れたり、出席者が結論を曖昧にしようとする雰囲気があれば、空気を読まずに切り込んで議論を収束するよう軌道修正してください。
出席者が上位役職であったり上司だと会話を遮るのを躊躇してしまう気持ちはよくわかります。しかし、司会には会議の場を仕切り、結論を導くという責任と権限があります。司会は、会議中だけは自分の役職を忘れて「自分はこの場の議論を支配する神なんだ」くらいの気持ちで堂々と進行すると良いでしょう。
司会のノウハウについてさらに学びたい方は「ファシリテーションの教科書」という本がとても参考になるので、ご覧いただければと思います。
- ファシリテーションの教科書
意思決定にはキーマンへの根回しも大切
意思決定アジェンダで可否が出ずに先送りとなる場合は、事前の準備不足の可能性が高いです。
意思決定に必要な情報が不足していたり、出席者のアジェンダへの理解度がまちまちだと、どれだけうまく進行しても可否判断ができない場合があります。
根回しというと聞こえが悪いかもしれませんが、事前に出席者のアジェンダへの理解度を把握して、情報レベルを合わせこみ、しっかりと当日に判断できる状態に持っていくことも会議の運営者として大切な仕事です。
会議後:議事の作成・共有
関係者への議事録共有はスピード優先
会議後は決定事項、宿題事項はその場で司会がラップアップしたことをベースに、次のアクションが取れるように会議後速やかに出席者と関係者へ共有しましょう。
議事録の作り方は、要旨のみや、誰がどう発言したかの発言録式に記載する方法などいろいろありますが、筆者は会議中の発言に合わせてキーボード打ちした議事(ベタ打ち議事)を元に、決定事項・宿題事項のみ会議後に整理・追記して議事を作成しています。
結論箇所はよく確認しますが、それ以外の途中議事はざっとだけ見直して修正し、多少の誤字や聞き取れなかった箇所はそのままにして、完璧さよりもスピードを優先するようにしています。
経営幹部に対しても、このやり方で特にクレームを言われたことは一度もありません。公式文書として議事録を残す必要のある場合は別ですが、それ以外では議事録の体裁や詳細を作り込むことに時間をかけなくて良いでしょう。
まとめ
この記事では効率的な会議の進め方について解説しました。
- 会議の良し悪しは事前準備で8割決まるので、会議運営者は意識して準備に取り組みましょう。
- 会議当日の成否は司会の腕にかかっています。堂々と場を仕切り、会議から結論を導き出しましょう。
- 会議後の議事は質よりスピード優先で決定事項・宿題事項を関係者へ共有しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
会議に関する専門用語を別記事に記載したのでよければ参考にしてください。