この記事では「M&Aでよく使われる専門用語」をまとめてみました。
経営企画の業務として、事業の買収・売却(M&A)を扱う機会もあることでしょう。
M&Aプロジェクトに参画すると、馴染みのない専門用語が数多く出て来ます。今回は、その中でもM&A業務で必ず使われるM&A用語を中心にピックアップしました。
それでは早速解説していきます。
経営企画になる前に知っておきたい専門用語【M&A編】
M&A(エム・アンド・エー)/ Merger and Acquisition
企業の合併(Merger)と買収(Acquisition)の略です。単に「MA(エム・エー)」と呼ぶこともあります。
ある会社の過半数以上の株式取得や事業の全部又は一部を譲受することで経営権を実質支配するケースで主に使われます。また、広義の意味でのM&Aでは、経営権が変わらない株式の一部取得などの資本提携もM&Aに含みます。
事業会社のM&Aの仕事というと事業を買い付けるイメージが強いかもしれませんが、事業ポートフォリオの見直しにより中核事業から外れた事業の売却案件などもM&Aとして担当します。
デューデリジェンス/DD(Due Diligence)
M&A対象会社に対して、財務状況や事業内容について詳細調査を実施することです。業務では「デューデリ」と略して呼ぶことが多いです。
上場企業でなければ基本的な財務状況もDDをしなければ掴めない他、資産価値の妥当性や事業の毀損がないかなど、買収の意義・価格を見積もるためには詳細調査が欠かせません。
何をどこまで調べるかは、対象会社の規模や経営状況、買収目的、M&Aにかけれる時間とコストによって様々です。
特に中国やアジア諸国などの後発国の海外会社を買収する場合は、データだけでなく自身の目で会社状況を隅々まで確かめることが大切です。
データ上は資産となる工場を保有していても実際にはボロボロで立て直すのに多額の設備投資が必要であるなど、目で見ないとわからない思わぬ落とし穴があることは多々あります。
PMI(ピー・エム・アイ)/ Post Merger Integration
買収・合併後の会社統合のことを指します。
M&Aは買って終わりではありません。むしろ、買うだけなら資金さえあればそう難しいことではなく、買収後のPMIでいかに目論見通りの成果を出すかの方が難易度が数倍高い仕事となります。
既存の経営をどこまで尊重し、どこまで会計・人事制度・ITインフラなどの仕組みを統合し、どう事業シナジーを出していくのかといった事を、PMIでプロジェクトチームを作りフォローしていくことになります。
NDA(エヌ・ディー・エー)/ Non-Disclosure Agreement
「機密保持契約」のことです。M&Aに関与する社内外の関係者と締結します。
NDAはなぜ必要か?
上場会社が買収対象であれば、M&Aの情報が外部に漏れると株価に大きく影響してM&Aが不成立に終わる可能性があります。また、売却案件であれば社員の雇用維持にも影響するため、不必要に情報が出回らないためにもNDAを締結しておきます。違反すれば損害賠償請求の対象となる可能性があります。
LOI(エル・オー・アイ)/ Letter of Intent
「意向表明書」と呼ばれます。M&A序盤に、会社の意思として売り手に対して買収の意向がありますよということを書面で通知する目的です。
書き方にもよりますが基本的には法的な拘束力はなく、検討を進める中でM&Aを中止することになっても損害賠償などが起こる可能性は低い類のものです。厳密な定義・規定はないため、LOI自体が省略されるケースや、MOUと同義に取り扱われることもあります。
MOU(エム・オー・ユー)/ Memorandum of Understanding
「基本合意書」と呼ばれます。M&Aの買収条件や買収金額などの基本事項を双方で合意します。
基本的にMOUの締結後にデューデリジェンスを実施するため、デューデリジェンス内容によってはM&Aが中止されることもあります。MOU自体にも買収に対する法的拘束力はありません。
DCF法(ディー・シー・エフ法)/ Discounted Cash Flow Method
企業価値を算出する手法の一つです。会社が将来生み出すキャッシュフローを金利などを考慮した割引率で割引いた現在価値を使って企業評価額を算出します。
ややこしいと思うので、ざっくりとした考え方としては、
- 市場では金利や投資で手元資金を増やす手段があるため、現在の1億円と翌年得られる1億円では価値が異なる。(現在の1億円>翌年の1億円)
- よって、翌年のキャッシュ、翌々年のキャッシュ…は割引後の現在価値にして企業評価額に上乗せする必要がある
とイメージしてもらえれば良いと思います。
企業価値算出は複数の手法で算出して比較することが多いですが、DCF法はその中でも必ず使用される評価手法の一つです。
終わりに:M&Aに携わるチャンスがあれば積極的に手を挙げよう!
今回は「M&Aでよく使われる専門用語」を解説しました。
事業会社でもM&Aが盛んになってきたとはいえ、なかなかM&A実務を担当する機会は少ないと思います。もし事業会社の在職中にM&A業務に携わることができれば、それは貴重な経験が得られる非常にラッキーなことです。
経営企画にいればそうした機会が巡ってくる可能性は高くなります。そのようなチャンスがあれば、積極的に手を挙げてみましょう。
今回は以上になります。