今回はこれから経営企画になる人に向けて、「経営企画に必要なスキル・資格」について解説します。
この記事は、以下に当てはまる人に読んでいただきたいと思います。
- 経営企画に必要なスキルを知りたい人
- 経営企画の仕事で役に立つオススメ資格を知りたい人
筆者は大手電気機器メーカーで経営企画の管理職をしています。これまでの社会人経験を元に、20−30代の会社員に向けたキャリア形成や仕事ノウハウをお伝えしています。
経営企画に求められる役割・スキルは、企業のサイズや業種によっても異なります。
ここでは筆者の経験を元に、大手電気機器メーカーでの経営企画をモデルに解説します。
まず経営企画の仕事内容について知りたい人は下記の記事を参考にしてくださいね。
経営企画に必要なスキル6つ
経営企画に必要なスキル6つをヒューマンスキル(人間性)、テクニカルスキル(専門性)に分類して解説します。
経営企画に必要なスキル6つ
- ヒューマンスキル(人間性)
- 論理的思考力
- プレゼンテーション
- コミュニケーション
- テクニカルスキル(専門性)
- プロジェクトマネジメント
- 財務・会計
- 会社ガバナンス
- ヒューマンスキル(人間性):仕事を進める上でのベースとなる、考え方や対人関係能力
- テクニカルスキル(専門性):勉強や業務経験で身につけることのできる、専門的な知識や技術
それでは、各スキルがどのように経営企画の仕事に役立つのか解説していきます。
ヒューマンスキル(人間性)3つ
まずヒューマンスキルである「論理的思考力」「プレゼンテーション」「コミュニケーション」の3つを解説します。
① 論理的思考力
多忙な経営幹部との接点も多い経営企画にとって、相手にわかりやすく物事を説明できる論理的思考力は絶対に必要です。
高い論理的思考力が身についていると、下記のようなビジネスシーンで役に立ちます。
- 口頭やメールで筋道立てて説明し、相手にわかりやすく伝えることができる
- 意思決定につながる選択肢を、抜け漏れなく・客観的な視点で整理することができる
- プレゼン資料を作るときに、分かりやすいストーリーを組み立てることができる
経営企画は経営幹部への報告だけでなく、他部門の関係者を巻き込んだ業務が多くあります。
そのため、相手に納得してもらうために論理立てて説明できることは非常に大切です。
論理的思考力は特別な能力でなく、①論理的思考のフレームワークを学ぶ(インプット)、②普段から結論に対して根拠を筋道立てて考えたり説明する(アウトプット)、を繰り返していくことで誰でも着実に鍛えることができます。
論理的思考のフレームワークを学ぶには「入門 考える技術・書く技術」がオススメです。
② プレゼンテーション
経営企画は多忙な経営幹部へ短時間で簡潔にプレゼンする必要があります。
そのためには、論理的思考力に加えてパッと見て理解できるシンプルなプレゼン資料の作成も不可欠です。
プレゼンテーションには、「ストーリーの構成力」、「資料の見やすさ」、「話し方」の3つの要素があります。
その中で特に社内プレゼンで重要なのは「ストーリーの構成力」と「資料の見やすさ」です。
ストーリーは、短時間でロジカルに結論(=言いたいこと)が伝わるように、「結論・課題・解決策・効果」の順に組み立てると良いでしょう。
ポイントは長々と背景や経緯を述べすに、結論から入りその理由をシンプルに説明することです。
詳細や経緯などの補足的なスライドは本編とは別に準備しておきましょう。
経営幹部は1日に多くの報告を聞き意思決定を迫られます。
余計なノイズを限りなく減らしてポイントのみ伝えるのも経営企画の役割です。
パッと見て理解しやすい資料作成のノウハウは「社内プレゼンの資料作成術」の内容が役に立ちます。
③ コミュニケーション
経営企画の仕事は、多くの関係部門を巻き込んで推進するものが大半なので、円滑に意思疎通を行い、相手に協力を得ていく高いコミュニケーション能力は不可欠です。
仕事上でのコミュニケーション能力が高い人とは、流暢に話せる、面白おかしく話せるということではなく、「人の話を素直に聴く」、「ロジカルに言いたいことを伝える」の「聴く」「伝える」がしっかりできている人です。
特に経営企画にとって「人の話を真摯に聴く」ことは重要だと思います。
大切なのは他部門が「直接自分たちで解決できない困り事」や「経営課題への不満・改善案」を相談してくれたことを「聴いて」、自らが解決するための行動にまで移すことです。
経営企画は経営幹部に近く、多くの部門責任者にも顔が効くので、会社の仕組み・ルールをはじめとした会社全体の課題や複数部門にまたがる課題は経営幹部や関連部門の責任者を通じて大概は解決することができます。
他部門の方もそれを期待して経営企画に相談に来るので、そうした期待に応えていくことで信頼関係が深まっていくことでしょう。
多くの関係部門との信頼関係があると経営企画の仕事は驚くほどスムーズにいきます。
ぜひ「聴く」「伝える」のコミュニケーションを心がけてほしいと思います。
テクニカルスキル(専門性)3つ
続いてテクニカルスキル(専門性)である「プロジェクトマネジメント」「財務・会計」「会社ガバナンス」の3つについて解説します。
①プロジェクトマネジメント
経営企画では、プロジェクトマネージャーとして関係部門を束ねた全社プロジェクトの立ち上げ・推進を任されることも多々あります。
特に経営企画で推進するプロジェクトは、同じチーム内で推進するプロジェクトと違い、複数の関係部門をまたいで経営課題を解決するプロジェクトチームを作って推進する類のものが多くなります。
利害関係の異なる部門をまとめて目標に向かってプロジェクトを推進する際に重要なのがプロジェクトマネージャーの存在です。
プロジェクト経験の浅い方は、知識としてPMBOK(Project Management Body of Knowledge)「プロジェクト管理に関するノウハウや手法を体系的に整理したガイドライン」を知っておくと、とても役に立ちます。
PMBOKはピンボックと読み「10個の知識エリア」と「5つのプロセス」で構成されています。
PMBOKは技術開発プロジェクトの色が強い部分がありますが、スコープマネジメント、スケジュールマネジメント、コミュニケーションマネジメントなどはどのようなプロジェクトにも共通するノウハウです。
これまでプロジェクトマネジメントをあまり経験したことのない方は一度、PMBOKを勉強されることをオススメします。
プロジェクトマネジメントとPMBOKを初めて学ぶ方には「マンガでわかるプロジェクトマネジメント」がオススメです。
②財務・会計
経営管理を行う上で、基本的な財務・会計知識は必ず必要です。
苦手意識のある方はしっかり勉強しておきましょう。
ベースとなる財務・会計知識に加えて、特に経営企画として大切なのは「自社の事業や管理会計の仕組みを理解した上で、経営数値を分析し、何が経営課題かを抽出できること」です。
経営管理を担当する部門が、単に月次決算、年次決算の数値を集計しているだけの業務になっていて、事業の本質と経営数値を結びつけれていないようであれば要注意です。
例えば、製造業において原材料価格が10%値上がりした時の利益影響はいつ頃・どの程度発生するのか?ということは自社のサプライチェーンの仕組みや材料原価構成など事業の仕組みを理解していなければわかりません。
経営管理は経営数値の良し悪しを見るだけでなく、原因分析と対策を考えることまでがセットだということを意識しましょう。
③会社ガバナンス
「会社法」や「ガバナンスのあり方」などの会社設立・運営に必要な法関連やガバナンス知識は経営企画として最低限理解をしておく必要があります。
「会社法」とは会社に関する法律をまとめたものです。
例えば、「会社における最高意思決定機関はどこか」、「取締役の最低人数は何名か」、「監査役の役割・責任は何か」こうしたことは会社法に法律として定められています。
また、2015年の東芝 不正会計問題以降、多くの日本企業でコーポレートガバナンス・コンプライアンス強化の流れが加速しています。
経営企画は、取締役会や経営会議を運営したり、会社ガバナンス改革に取り組むこともあります。
そうした業務を行う上で、会社の仕組みがどのように法律でルール化されているかを理解していることは非常に重要です。
経営企画を目指す方へオススメの資格
「論理的思考力」「プレゼンテーション」「コミュニケーション」「プロジェクトマネジメント」「財務・会計」「会社ガバナンス」は経営企画の業務遂行において非常に重要ですが、なかなか目に見えないスキルでもあります。
そこで、転職活動や社内異動で経営企画を目指す人にとって、関連する資格取得をしておことは有効なPR手段です。
経営企画を目指す人へオススメの資格を解説します。
中小企業診断士
中小企業診断士は、主に中小企業を対象とした経営コンサルの国家資格です。
経済、財務・会計、経営、運営、法務、ITといった経営に必要な専門性をバランスよく学習する必要があるため、経営企画の素養をアピールするには最適な資格です。
取得難易度はかなり高いですが、その分、持っていると経営のベースとなる専門知識が十分に備わっているとみなされるのでPRには有利な資格です。
また、実際に資格取得まで至らなくても経営に関する一通りの知識を学べるため、経営企画になる方のとっては中小企業診断士の資格勉強自体に価値があると思います。
TOEIC800点以上
経営幹部で英語が全くダメという人は一昔前に比べてかなり少なくなりました。
すぐに業務として英語を使うかどうかは別として、ある程度の英語力があれば経営企画を経た後のキャリアとして、例えば海外子会社で経営者として駐在させても大丈夫だろうという会社としての育成プランも立てることができます。
TOEICスコアと英会話力は比例しないとも言いますが、800点あればひとまずは大丈夫です。今後も伸び代があるとみなされます。
応用情報技術者
応用情報技術者は、ITエンジニアとして、応用レベルの知識・技能を有していることを証明する国家資格です。
情報技術者試験の中では、中位に位置する資格であり、3ヶ月から半年ほどしっかりと勉強をすれば合格できる難易度です。
今やどんな企業でも経営効率化やマーケ施策などにITを駆使するため、経営企画でもITの素養が求められます。しかし、IT系企業でない場合、大企業の経営幹部や経営企画でもITにさほど詳しくない方も意外に多いです。ITに関する資格をPRすることでITリテラシーの高い人材として一歩リードできる可能性があります。
ちなみに、応用情報技術者を取得していると、中小企業診断士の7つの筆記試験科目のうち、「経営情報システム」が免除になります。7つの試験科目はそれぞれが難易度の高い科目なので、一つでも免除科目があるとかなり勉強は楽です。
まとめ:経営企画になる前にスキル・資格を学ぼう!
本記事では「経営企画に必要なスキル・資格」について解説しました。
今回紹介した6つのスキルは経営企画になる人だけでなく、会社で働く人であれば誰でも身につけておけば仕事を有利に進めることができるものばかりです。
ぜひ自分に不足していると思うスキルがあれば勉強してみてください。
今回紹介した「経営企画に必要なスキル」を学ぶためのオススメ書籍を別の記事にしているので参考にしてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。